英国日記25
Isle of Wight
イースター休暇 II(湖水地方)
次の日われわれは、ピーターラビットで有名な湖水地方に行く。もっと
もわれわれの目的はピーターラビットではなく、その風景であった。ジュ
リーの家におよばれしたときにイギリスで旅行するならどこがいいかと
尋ねたのだが、その中にこのレークディストリクトがあった。そこで、
今回の旅行のメインとしここに2泊することにした。
AA(イギリスの自動車連盟)発行のガイドブックでホテルやB&Bを探して
ケズウィックというところにあるゲストハウスに予約をとっておいた。
料金はやや高めであったが、変なところよりは高い分ましだろうと思っ
たからである。料金は一人18ポンドで子供が半額だったと思う。
普通のB&Bくらべてかなり高いといえる。前の日に泊まったゲストハウ
スが15ポンドで子供がただだったものだから、家内は今日のところは
高いし変なところだったらどうしようと文句をいっていたが、実は着
いてからわかったことだが、夕食付だったのである。
家内も急に態度を変え、ここにしてよかったといいはじめた。
宿に行くまでの道は牧場の中の狭い道が丘の方に登って行く感じで道
を間違えたのではないかとさえ思ったが、しばらくすると石造りの大
きな館風の洋館が見えてきた。かつては小領主の館だったのかもしれ
ない。大きな木の扉があり、中は品の良い調度品で素敵なインテリア
である。着くと居間でお茶のサービスを受け、女主人に部屋に案内さ
れたが、部屋も品がよくきれいに行き届いている。裏側に
広い裏庭があり、部屋から眺められる。湖水地方はその名のとおり、大
小いくつかの湖が点在していて、その湖に沿って道がついている。
その日は夕食まで時間があったので、来た道を戻る形でウンダミアの
町まで出かけた。
ケズウィックは湖水地方でも北に位置しているので、南下する形である。
途中にワーズワースの記念館がある。ウンダミアは観光地だけあって、
お土産屋さんやホテルなどが多くある。なかなか楽しい町でもある。
さて、ゲストハウスでの夕食だが、われわれはいつもの調子で普段着の
まま食堂に行った。ところが、他の客は皆着飾っているではないか。
今さら背広などは持ち合わせていないからちょっと肩身の狭い思いで
夕食についた。料理は本格フルコースで、イギリスに来てはじめてお
いしい料理にであった思いであった。本にはゲストハウスとなってい
たが、どちらかというとマナーハウスに近い感じである。ただし、ふ
つうマナーハウスとなると一泊25ポンド以上するのが普通である。
ただし夕食が付く。いずれにしても日本円に換算して考えるとどの場
合でも安い。(ロンドンの宿は別である)
さて次の日われわれは、汽車が走っているというので、レークディスト
リクトの山岳地帯を外側にぐるっとまわる感じでRavenglass鉄道に行った。
そこで汽車に乗ったが、イギリスではこのようなSLが数多く走っている
。この鉄道のところは、ちょうど昨日行ったウンダミアと山を隔てた西
側にあり、そこから山道でウンダミアにでれる。来た道を戻るつもりは
なかったので、この道を行くことにする。多少車がオンボロなので、
オーバーヒートしないか心配ではあったが、日本の峠道しか経験して
いなかったので、それほどすごい道とは考えても見なかった。というの
は、この道はHard Knott Pass(非常にきつい峠道)と言う名前がついて
いて、上るにつれて道はどんどん狭くなりしだいに登山者の道なのか車
が通る道なのかわからなくなった。事実、途中で何人もの登山者とすれ
違った。とはいっても車が1台とおるには十分な広さがあるのでその点
は大丈夫であるが、しだいに勾配もきつくなってくる。
むしろ、道というよりは山の斜面そのものといった感じである。
麓では、後ろから車がついてきていたのだが、いつのまにいなくなり、
この道を上っているのはわれわれの車だけではないかと心配にもなっ
てきた。それでも2度ばかし、対向車が来たので、この道は先がある
のだなとやっと安心できたわけである。ところが、対向車がくると道
を譲り合うために停まらなければならないが、これだけ急な坂道で、
しかも未舗装であるのでフォットブレーキからアクセルに踏み直す坂
道発進ができない。というよりも止まるだけでも車が後ろにずり下が
りそうな気配である。実際、初めはフットブレーキからの発進を試み
たが、後ろにずり下がりあわててブレーキをかけたが、すぐには
とまらない。冷や汗もんであった。ぼくの車はハンドブレーキの利きも
すこぶる悪い。ハンドブレーキによる発進といってもハンドブレーキ
だけでは車が固定しないので、ハンドブレーキとフットブレーキを併
用してやっと発進することができた。
よくあんなところで、車の転落事故が起きないものだとあとになって感
心もした。もっとも、オンボロ車でなくもう少しちゃんとした車ならも
う少しは楽であるに違いない。峠の頂上にやっと登りきって安心したの
もつかのま、下りが、またすこぶるすごい。傾斜が急なので、道が見え
ないのである。恐る恐る道を探しながらゆっくり降りるしかない。目の
前には湖水地方の湖が見えるが風景を鑑賞している余裕は正直言ってな
かった。くるまを止めるとずり落ちそうであるので、ゆっくりでもタイ
ヤを回転させていなければならない。一歩誤れば、車ごと落ちていきそ
うである。さすがの娘もいつもは車の後ろでギャーギャーいっているの
だが、この時ばかりはだれもが無言であった。日本でも数多くの
山道や林道を走ったことがあるが、このような道はあとにも先にも初め
てであった。しかし、このことが今では懐かしい思い出となっているわ
けである。(でも2度と通ろうとは思わない)しばらく下ると普通に走
れる道になりやっと一安心できた。
さらに下に下ったところにゲートがあり、そのゲートをあけなければな
らなかったが、その場所に、とても危険なのでこれより先は行かないほ
うがいいとうような標識が立っていた。もし逆のコースだったらわれわ
れも行かなかったにちがいない。われわれが来た方にはゲートがなかっ
たと思う。あるいは、ゲートが開いてあったので、気がつかなかったの
かもしれない。もし腕に自信とスリルを味わいたい人がいたら、是非行
って見るとよい。
Dover